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手縫いにつての私考

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鞄好きの人には手縫いの鞄に憧れる人が少なくなくおられます。
私なりに手縫いについての考えを記したいと思います。
手縫いは時計のトゥールビヨンという機構ににています。
懐中時計であった時代には画期的な機構であったトゥールビヨンも、腕時計全盛の現在では複雑な機構のため組上げれる職人が限られ手間がかかり、そのため時計好きの憧れとなっています。
手縫いも、進歩したミシンが出回っている現在、鞄が手縫いである必要はないのだけれど
手間のかかる作業で、手縫いをする職人が少なく希少価値として欲する人は少なくない。
手縫い鞄を私なりにコスト計算してみると、ブリーフケースで30万円前後の価格で作らないとあいません。10万円前後で手縫い鞄を売っていたとしたら、作り手が無理をしているか誤魔化したものだと思う。
私も一時、手縫いに夢中で取り組んだ事があります。その時出来た鞄にどうしても高い値段が付けれずに苦しんだことがありました。その時思ったんです。
妥協せずに手縫いするなら、妥協しない値段をつけるべきだと。その代わり注文したお客さまの満足できるレベルのものを誠心誠意追求する。
手縫いはミシンと違って、運針を二度するようなチェーンステッチになります。
手縫いは右上がりのステッチになり、ミシンは左上がりのステッチになります。
ミシンで右上がりのステッチを縫おうとすると、ミシンの構造上糸が擦れて切れてしまうのです。ただミシンでも菱目打ちをして丸針で縫えば、手縫いモドキになり、素人には判別しにくくなります。
手縫いのステッチは一寸6目、8目までは初心者でもほどほどのステッチが縫えますが、一寸10、11、12、13目と細かくなるにつれてテクニックと精度が必要になります。
テクニックと精度を上げるとステッチは鋭利なものになってゆきます。
菱目打ちの良し悪し、菱切りの研ぎ具合、糸の選択と蜜蝋の含み具合、メリケン針の太さすべてステッチに影響します。
今まででこの手縫いだけは真似出来ないと脱帽した手縫い鞄がありました。
それはエルメスの80年前ほどに作られた横幅60センチほどの大きなソフトトランクで一寸11目のステッチ幅を、その幅より太い麻糸で革、板を突き抜いて縫いきったもので、ステッチ幅と糸の太さのセオリーを無視し、それでありながらステッチは安定した角が鋭利な四角に近い菱形の連続。その手縫いの迫力は今も私の脳裏にしっかり刻まれています。
手縫いからは少し距離をおいている今の私ですが、手縫いをやめてしまったわけではありません。手縫いという作業は非常にワクワクする作業ですから。

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コメント (2)

筒井人樹:

興味深く拝見いたしました。私は手縫いというと、鞄に限らず(靴や服ほか)手縫いというのがどのようなものかも分からず、名前に憧れている気がいたします。
本などでは、手縫い絶対主義みたいな記事も見受けられますが、価格も含めると(使用素材が同一なら)どうなのだろうと考えてしまいます。

ル、ボナー:

筒井さま
靴や服の手縫いについては門外漢の私には深い知識はないのですが、靴はすくい縫い、服は運針という技法を遣い履き心地、着心地のために使う見せない手縫いです。それに比べ鞄のそれは見せるためのチェーンステッチです。メリットもあるのですが、ミシンで作る鞄との価格差ほどのメリットかと言われると人それぞれだと言うしかありません。
ただ作り手の思いを感じたいのであれば、手縫いの1針1針のステッチが伝えてくれます。

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2005年11月04日 22:15に投稿されたエントリーのページです。

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