革という素材の面白さは、柔らかでありながら厚みがある素材であるということだと私は思っています。
バッグに使う他の素材は厚みを出すために(生地やナイロンは元々厚みがないから)、芯材を加えてゆきます。表面の素材の質感は芯材で決まります。
革のバッグも多くの既製品の場合、均一な製品を生み出すために表面は革でも薄く割って、芯材で質感を出している場合が多い。それって、せっかく革を使って作るのにもったいないと思うのです。
革は柔らかくて厚みのある素材。その特性を生かして作った方が楽しいと私は思っています。
生地やナイロン素材では出来ない漉くという作業によって、厚みを微妙に操作し工夫することで特別な表情を表現できます。

一番上の革は、シュランケンカーフの元厚の厚みのコバ。シュリンクしたことによってカーフだのに2,5ミリほどの厚みがあります(通常の生後6ヶ月のカーフ革は1,2~5ミリほど)。
この厚みをコントロールすることで、キューブボストンのような表情を作り出します。
真ん中は世界一厚いであろう北欧の雄牛の革タウラスの元厚、7ミリ強あります。
一番下は、そのタウラスのコバを磨いている途中の状態。
雄牛の大牛の革なので繊維が粗いことが分かると思います。
シュランケンカーフのコバの繊維と比べてみると歴然です。
磨いてコバの密度を高めて磨き上げるのが、大変です。
革の質感を生かしたモノ作りをしたいと思っています。
でもまだまだ思うようには出来なくて、これからも試行錯誤の連続。
でも革が好きで始めたこの仕事。革の表情を最大限表現するモノ作りを意識していこうと思っています。
厚い革、薄い革、柔らかい革、硬い革、深い革、浅い革etc色々な革。
活きる革モノ作ってゆきたい。それこそ革モノ作り人の真骨頂。

水谷時計修理工房にお願いしていた極薄時計のエベルのメンテナンスが完了。
高級ムーブメントのメンテナンスはいつもより慎重な作業。ゆえにちょっとメンテ代高かった。
頼まれていたペリンガーのクリスペルカーフで作ったベルトを取り付けてみました。
極薄時計には本来同じように薄いベルトがバランスがいいのは分かっている。
でもふくらみのあるベルトにしたかった。それも薄く平らに漉いた革の間に芯を単純に入れた時計ベルトではなくて、二次曲線が独特のふくらみ曲線を描く時計ベルト。
ベルトは時計本体にとって、絵画の額縁のような関係。
少し額縁だのに出しゃばったようですが、お許しくださいませ。

だって私の60年前のセイコーに薄く作ったクリスペルカーフのベルト付けてみましたが、なんかつまらなくて。納まってはいるけれど。
でも小さな革製品だけれど時計ベルトって、作るのが楽しい。
革の質感を生かす工夫に特化したモノ作りができるから。
常連客のF氏のIWC用にクリスペルカーフの時計ベルトを作りました。その時は思いきりふくらみを出したベルトを作ってみたのですが、1年経って本当に良いエージングしています。
時計ベルトとして使う革としてクリスペルカーフは、抜群に良い革である事は実証済み。
革の質感を生かすモノ作りの工夫をこれからも続けていきたい。
いろいろお手数お掛けしてすみませんでした。
到着を楽しみに待っています。
その後ハミさんの具合はいかがですか。