
8年ほど前に友人の店長(あだ名)に作った学手風ブリーフケースです。
あまりにも私の願った経年変化をしているので、
嫌がる店長を屁理屈満杯で説き伏せて
無理やり奪い取り、私が使うことにしました。
店長は顔は怖いけれど、いい人です。
8年の年月がこの味わいを作り出しました。
革鞄は長く使うと当然形が崩れたり、傷ついたりします。
そういったことも含めて、馴染んでいけばいいと思っています。

マチの変形も雰囲気だと思っています。
作り終えてお客様の手に渡り、愛情持って使っていただき、時々ル・ボナーに里帰りしてメンテナンスしながら味わい深めるカバンたち。そんなカバンたちを見るのが愛おしい。
この学手風ブリーフケースはイタリアのワルピエ社のブッテーロで作りました。
この革は100パーセントピュアタンニンなめしのショルダー革で、オイルは植物性オイルを使った革です。
ミネルバリスシオなどのバケッタ製法の革のような凄いエージングはしませんが、長く寿命を保つ私の大好きな革です。傷付きやすい革ですが、時が癒してくれる復元力のある革です。
そんなブッテーロの魅力を出来るだけ引き出した鞄を作りたいと思いながら作った鞄がこの学手風ブリーフケース。鞄を包み込む2本のベルトは開け閉めが面倒ですが、この鞄においてなくてはならない部分だと思っています。オーソドックスな革鞄ですが随所にル・ボナーらしい工夫を加えています。

学手と同じぐらいの年月使われたライターコレクターのSさんがオーダーしたブリーフケース。
本体底部分が変形していたので、矯正したらこんな感じ。ついでにコバも磨き直しました。
Sさんが定年退職するまで使い続けても、このブリーフケースが寄り添っていることでしょう。
カブセ式のブリーフケースは固い芯を入れずに作っています。革なりの緩みが使い込んで出てきても良いと思っています。緩みながら、経年変化しながら、馴染みを愛でながら、使い手の思い出がしみ込んでいくような革鞄が好きだから。私たちが鞄職人を続けている限り、それをサポートしながら良い形で年老いていって欲しいと願っています。

名古屋に住む女性が6年間毎日仕事の相棒として使いつづけている、ブッテーロ革のグリーン色のブリーフケースです。糸がほつれたのでその修理での里帰りです。
ブッテーロのグリーン色は新品の時、特に爪キズが目立つ色です。でも使い込んでゆくと、その爪キズもエージングと共に内包され、こんなに良い感じに馴染んでゆきます。ついでにコバ磨きして革の表面をリフレッシュさせてあげましょう。ブッテーロという革は使いこんだとき、そのなめしの素晴らしさを実感できる革なんです。
8年店長が酷使して私の所有物に無理やりなった学手風ブリーフケースも、これから私が私色に馴染ませていこうと思います。愛しさえすれば、私と一緒に年老いながら生き続けるブリーフケースです。私はこの馴染みを素敵だと思っています。
連休中はお忙しかったでしょう。
皆さんの凄い収集品を見せていただき
凄すぎて言葉が出ないくらいです。
何事も極めることは凄いなあとおもいました。
ブッテーロという革の魅力が本当に良く出ていて素敵で、私もブッテーロの革のバッグが欲しくなりました。
いつかは購入したいリストには入っているのですが、他を切り詰めてでも、貯めないと。
また仕事がんばろう。