山奥のお宝寺の住職から入手した50年代のルクルトのフューチャーマチック。
少しやれた風情がレトロな未来感じられて気に入っていた。
最初期の自動巻きは独特のハーフローター式。これが壊れた。
水谷さんもギブアップしたので、スイス本国送りでジャガールクルトに修理を頼んだ。
私にとって高額の修理代ではあったけれど、
支払いは1年以上先をいい事に頼んでしまった。
そのフューチャーマチックが私の元に1年半ぶりに戻って来た。

ドキドキしながら包みを開けて1年半ぶりの再会。驚いた。
まるで新品に交換したのではないかと思えるほどのコンディション。
ケースはそのままで風防とダイヤルと針は交換したのだけれどこれほど綺麗になるとは。
グルグルと音と感触が伝わるハーフローターの巻上げも実にスムーズ。
裏蓋上に付く、独特の時刻あわせもグラグラだったのがカチっとしっかり感のある硬さに。

瀕死の状態だったこの時計の変わり様に感動を感じている。
現行品の時計はどんな高級時計でもある程度は流れ作業的に作られてゆく。
それに比べ時計の修理復旧させる作業は一人の職人が向き合ってするはずだ。
スイスの工房でこの50年ほど前に作られた時計を修理している時計師の姿を思い浮かべる。
新品の時計を購入する時より、満たされた幸せを感じる事が出来ている今の私です。
自社製品でも古くなった時計は修理しないという時計メゾン多い中、
自分達が作った品は全て直すというジャガールクルトは素敵だ。

50年代に未来を想像して考え出されたこのダイヤルデザイン。
時刻合わせが裏蓋上にあり自動巻きオンリーの機構のため、
前面から見た時にケースサイドに普通あるリューズなどの突起物をなくす工夫も独特。
そんな工夫とデザインが、フューチャーマチックに特別な雰囲気を与える。
アンティーク市場ではこの時計は程度良いモノで25万円ほど。
ただ独特のハーフローター自動巻き機構のために程度良く見えても、
私のフューチャーと同じ運命はそう遠くない時期にやってくる。
私のフューチャーマチックは50年の月日を動き続けて一度死に、
再びリスタートして新しい50年をこれから生きる。
私にとってかけがいのない時計へと覚醒したルクルト・フューチャーマチック。

愛おしさ感じながら、フューチャー用にと作って1年半前まで使っていたベルトを装着。
永遠を信じれる時計という機械と、いつか朽ち果てるであろう革ベルトの滅びの美学の危ういバランスが好きな私だ。
ルクルトのフューチャーマチックはスイス本国送りの修理という贅沢を経て、
私にとって今まで以上に特別な時計として存在することになった。
この贅沢の豊かさに十分満足しているボンジョルノでありました。
まさに真の値打ちがあるO/Hになりましたねえ。いやいやこれほどまでにやってくるとはちょっと想像していませんでした。海の向こうに真剣師がいたという実在感がこの時計には宿っています。一生手放せませんね。これならアルファも海の向こうにいるはずの真剣師に徹底的に見てもらったらよかったのに。
Re: pretty-punchan さん
本当に素晴らしいコンディションに生まれ変わりました。高かったけれど、見た瞬間それを忘れてしまう素晴らしいO/Hでありました。是非今度来店された時に見てください。感動すると思います。
アルファと同じにしちゃ無理がある。こちらは神戸にいるであろう市井の真剣師と巡り合ってアルファ格安維持を模索していきたいと思っております。
ル・ボナー松本