ル・ボナーの一日

この業界で37年

2012年09月08日

IMG_6746.JPG カバンを作り始めてもう37年になるんだなぁ〜。 私ほどこの業界のあらゆる立場を経験した者はそういないだろうと思う。 まず二十歳前に手作りカバンを作るグループで鞄を作り始めてその後すぐに独立して、 鞄屋さんにオリジナルの革製品を卸し始めた。 その後お店を持ったけれど3年ほどで幕を閉じた。その後が凄い。 大手アパレル(リーバイス、オンワード樫山、三陽商会、ワールド)や三菱商事とも取引きをした。それも個人の超零細なのに口座まで持って。 でも社会の仕組みが理解出来ていないその頃の私は人生の中で一番貧乏だった。 その後鞄問屋からオリジナルブランドを出したりもした。 自前で生産し営業までをハミと二人でする方法しか知らなかったその頃の私たちには無理があった。今思うともったいない話しだ。 それでその後 世界ブランドを目指した鞄ブランドの企画として、短かったけれどサラリーマンも経験した。しかしバブルがはじけてその会社も解散。 あのサラリーマン時代が一番楽だった。そして多くの仕組みも学んだ。 その後量産組み上げ職人も経験した。 あの時組み上げた鞄はたしかレノマというブランドだったなぁ〜。 一ヶ月に200個生産は私には無理だったぁ〜。 そしてまたまたオリジナルブランドを始めた。 その時はセレクトショップのバーニーズにも置いてもらったりした。 その後10年ぶりに再びお店を神戸に持て て、これはつぶさず19年が経った。 でもそれからも落ち着かず、職人を育てて規模拡大を試みて苦しい状態を続けた。 それが私には身の丈以上の事だと悟り、やっと落ち着いた現在の日々になってまだ7年ほどしかたっていない。その落ち着いた時期頃からこのブログも書き始めた。 今まで七転八倒しながらこの業界の隅々まで経験した事がやっと実になった。 現在信頼する職人さんたちとの良好な関係で協力してもらいながらカバン作りを楽しめる日々を過ごせているのも、そんな過去が多いに役立っている。 それにしても貧乏だったなぁ〜。 でもそんな一昔前が無性に懐かしく思い出される。 貧乏はもうイヤだけれど愛おしい。 きっと貧乏な日々が懐かしいのではなくて、 空振りだらけだけれど一生懸命に生きた日々がかけがいがないのだ。 鞄職人を長く続けているけれど終着点は見えない。 私は職人として足りない部分だらけで、 その事を自覚出来たから今日まで続けられているのだと思う。 手先は不器用だし、個性あるデザインセンスも持ち合わせいない。 経営の知識もなく、事業としてビジネスを構成する才覚もない。 そんな私にあるのは一生懸命カバン作りしてきた日々と、 私が持っていない技術や知識を素直に受け入れ吸収する能力。 これを能力と言うのかは分からないけれど、 多くの才能ある人たちと知り合ってその事を糧として今日に至った。 一つの能力に秀でている人は万能ではない場合が多い。 でも秀でた能力はその部分だけを見ると多くの事を教わる事が出来る。 そんな私の半生を詳細に綴った文章も載る「鞄読本(仮名)」という、 鞄好きな仲間たちと共同で作った自費出版の本が今年中には出来上がります。 いっぱいの挿絵は古山画伯。いっぱいの写真はケンサキ御大。編集はでべそ会長。 共同出筆者は7人。印刷製本は大和出版印刷さんです。 是非買って読んでみてくださいね。 過去を振り返り、未来を思う。 私の半生の記憶は私だけのかけがいのない財産。 その財産の積み重ねから、 ル・ボナーしか作れないカタチをこれからも二人で創出していきたい。 過去の遺産があるからあせらず少しずつ確実に。

Le Bonheur (08:35) | コメント(10)

Comments

  1. おおたがき より:

    おおっ!本、買いますっ。
    Re: ボンジョルノ より
    今月末最後の打ち合わせを神戸でして、
    あとは本が出来上がるのを待つ段階です。
    是非宜しくお願いいたします。

  2. たかたか より:

    サイン本を限定販売してくださいね(笑)。
    Re: ボンジョルノ より
    サインなんてやった事ないので。
    でも買っていただけるなら。

  3. より:

    ぜひご本を買わせて頂きます。
    遠方でも購入できますでしょうか?
    カバン作りの長い経験が良い形で実を結んで良かったです。大変なご苦労の連続であったことが文章から伝わって参りました。継続することがご夫婦の最大の長所なのかもしれません。
    Re: ボンジョルノ より
    アマゾンからも販売する予定にしています。
    当然直接メールでの注文も受けますよ。
    よろしくお願いします。

  4. mari より:

    もし読めば長年の疑問が解決するのでしょうか。それは作り手が魅力なら商品も魅力的なのかという疑問です。
    例えば海外の音響機器開発者は時間を見つけてはコンサートに足繁く通うそうです。そういった技術者が作った機材はたとえ稚拙な技術であっても音楽愛好家を魅了する魅力的な商品であることが多いそうです。逆に日本スタッフが連日の残業で時間的余裕もなく、海岸で機材の音量をMAXにしてテストを繰り返しているため難聴気味で、業界では笑われているそうです(技術力は高いのに、、)
    その人の余暇の過ごし方や思いが魅力となって商品に照り映えるものなのでしょうか。
    例えば「物は良くないのに魅力的な商品を作り出す人」は深く付き合うとやっぱり大変なのでしょうか。
    私は自身が作り出す製品は高評価なのに海外では不人気な日本人男性が不思議でなりません。(多分生産しているのは”個”ではなく”組織”なんでしょうね)
    Re: ボンジョルノ より
    その答えはこの本読んでも出ないと思いますよ。
    でもその答えはお話し出来ると思いますので、今度来店された時に。
    職人(技術者)とデザイナーは違う人種です。当然プロジュースする人種もまた違う。

  5. しげお より:

    ボンジョルノ夫妻には現在進行形でも随分、助けて頂きました。万年筆のことをカバン屋さんで学び友が出来。挙げ句には車の話まで。
    今ではメル友。(笑)ご縁を頂き感謝しています。今後ともよろしくお願いします。
    Re: ボンジョルノ より
    いやいや私の方がしげおさんに万年筆の不条理?を教えて頂きました。
    これからも宜しくお願いしまぁ〜す。
    昨日は横浜から車でご夫婦が来店。まだそんなに深みにはまっていない万年筆好きのご主人に、私のコレクションを大量に見せて書いてもらって、久々万年筆を熱く語ってしまいました。やはり万年筆好きはパパスでしょうと売り込んだら、ライムグリーンのパパスをお買い上げ〜。

  6. まもる より:

    初めまして。
    大分の過疎地で独立して紳士婦人の注文服をやってます。(極が付く貧乏ですがw)
    2年ほど前になるでしょうか。。。
    顧客からその娘さんがスペインで購入した箱型のコインケースの修復の依頼を軽い気持ち受けて、手縫いは手縫いでも服の仕立てには無い技術に冷汗でした。
    レノマの話は、私はレノマのパリ本社に研修で居た事があるので、興味深いですね、想像は容易につきますがw。
    実は私は松本さんの大ファンです。
    鞄はまだ手にした事はありませんので、今の所は文章の大ファンと言ったところでしょうか。
    ですので、ぜひ書籍を購入させていただきます。
    ご縁有れば、これから宜しくお願い致します。
    Re: ボンジョルノ より
    モノ作する仕事を続けられて今は本当に良かったと思っています。頑張ってください。いつかお会い出来る時があるといいですね。

  7. samu より:

    いつも、ブログを見て感銘を受けています。
    お二人の過去が、現在のルボナーに引き継いでいるのですね。
    いつも、お出かけにはルボナーのMyBagがあり大切に使わせて頂いてます。
    セシールやシャネル等流行りのバックがありますが…私はルボナーの鞄が大好きです。
    お取り置きしている、鞄等、寒くなったら取りに伺います。
    申し訳ございませんが、暫く預かって置いてください。
    ハミさん、手術成功おめでとうございます(^-^)/
    モチロン、本も読みますよ~♪
    Re: ボンジョルノ より
    コメントありがとうございます。
    これからもどんどんお買い上げ宜しくお願いいたします。
    ハミは元気です。本の方も是非 ご購入してください。

  8. samu より:

    誤字・・ですセリーヌでしたね
    (苦笑)

  9. よしだ より:

    はじめまして。
    いつもこの素敵なブログを見ては「いつか自分も」と夢想している学生です。
    書籍が出たら是非購入させていただきます。
    楽しみにしております。
    Re: ボンジョルノ より
    11月中には今の所出せそうなので、
    是非読んでみてください。

  10. sacchin より:

    いつも楽しく拝見しています。
    本をご出版されるとのことで、おめでとうございます。
    革に携わり、まだまだ初心者の私ですが、
    きっとこの本は私の一生のバイブルになると思います。
    今から発売がとても楽しみです^^
    Re: ボンジョルノ より
    バイブルなんてお恥ずかしい。
    もっと気軽に読んでみてください。

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