ル・ボナーの一日

「エルメス」勝手に研究 Ⅱ

2021年10月04日

連続して。エルメスのこのシンプルなファスナータイプ折財布を細部までチェックしたら高級とそうでない違いを痛感させられた。このタイプの財布はよく似た仕様であちこちのブランドで作られていて30年ほど前に私も作った事があるが似て非なるもの。多くのブランドではこのタイプの財布を現在1~2万円台で販売しているのではないでしょうか?エルメスはこの財布をその10倍ほどの価格で販売しています。ブランド力だけではない何かを探ってみたいと思います。

ボックスカーフ系の硬い革で作ったタイプだとそれほど感動を強く感じないけれど、山羊革のシェーヴルミゾールでしょうか?使ったブルーの方は大変気になる。芯なしで柔らかくて表0,5mm?内0,3mm?をファスナーサンドして浮かしで
ミシンステッチは至難の技、そこから生まれる特別なしなやかさは既存の量産手法だと厳しい。

この底の切込みなしのマチと本体の縫い合わせは幅が無くてどんな特殊なミシン使ってみても無理だよねと思ってまじまじと見たらここは手縫いだった。

鞄の時にお伝えしたと思いますが、表が左上がりステッチが手縫い、右上がりがミシンです。その上こんな細かなピッチの手縫い見た事ない。ル・ボナーで最小ピッチは1寸12目です。そして多く使うのは1寸10目までです。このステッチを計ったら1寸14目でした。硬い革なら何とかギリギリでしょうが柔らかな革のステッチだと1寸14目は糸目が見えない手縫いになりかねない目幅。このステッチのアップ画像でも確認出来ると思いますが、あまりの細かい目幅の為に表より裏のステッチの方が綺麗、普通逆なんですが。

内装は同色の内装専用革。この内側に使う革はきっと特別表皮の強度のある革だと思う、でないと芯貼らずに0,3mm厚に直接ステッチで縫い付けると使用に耐えれないはず。この両側のポケットも2枚貼り合わせです。どこまでも薄く作りながら強度はある素材開発から生まれた高級なシンプル財布には脱帽です。

この財布をじっくり観察していたら芯なしの薄い仕上げでラウンドファスナー財布とかL字ジップウォレットも作れたら上等だよねと思ってしまった。でもまずはこの財布の薄さから生まれる高級感を量産製作でも出来る手法を考えないと。加えて中央にコインケース部分を加える、これはもう良い案がある。が量産での全体の柔らかな仕上げと手縫い部分をミシン縫いでも出来る方法が思い浮かばない。

パリのエスプリを感じるエルメスの製品には刺激を受ける。65歳越えて年金受給者になったけれど月割すると実質3万もらえないフルは払っていない国民年金だけ受給者。そんな私はこれからも健康である限り働き続けないといけません。そんな高齢鞄職人を刺激し頑張る力を与えてくれるエルメスの革製品たち。そして当然この財布たちも私の所有物ではありません。

 

Le Bonheur (15:42) | コメント(0)

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