ル・ボナーの一日

過酷で無謀な挑戦かも

2014年11月14日

親しくしているT社長が泣きそうな顔して来店。2年ほど愛用していた細ダレスに何かこぼしてしまったみたいで、取ろうとしたら余計に酷い状態になってしまったと。見てみるとどうやら瞬間接着剤をこぼしてそれが染み込んでいて取ろうとすると革の銀面を完全に削り取らないと取れそうにない。そうやって取ったとしてもそのシミ以上の傷が革には残る。その状態を隠す為に全体に厚く顔料を塗れば誤魔化せるかもしれないけれど、そうすると革の魅力は完全に失われる。もし失敗したら許してねと持ち主にお断りを入れて、ブッテーロの復元力があればうまくいくかもしれない方法に挑戦しみることにした。

昔、あるお客様が細ダレスを持って京都の鴨川沿いを歩いていて転んでしまい、石の粒が捲れ込むほどの傷を付けってしまった事があった。これは復元はいくら何でも無理だと思っていたら、数年後にその細ダレスを見たら傷が気にならない程度まで復元していた。その時、ブッテーロという革の復元力には驚かされた。その後も何度かブッテーロの復元力の凄さを見た。そのブッテーロの復元力を頼りに試みる方法とは

_DSC7706.JPG

瞬間接着剤がこびりついた部分だけでなく、盤面全体の銀面を紙ヤスリで削ってしまう。削り方はある程度銀面部分も残し、削る部分はシンメトリーに模様のようになることを想定して。削った部分には同色の染料をしみこませると良いかもしれない。今回は模様の様になって欲しいと願ってコーヒー液を染み込ませてみている。

_DSC7703.JPG

後はひたすら乾拭き。この広さを満遍なく磨く素材は、目の詰まったハンカチのような素材がベストみたいだ。あとは毎日時間があると磨く。それを1年も続けるとブッテーロという革なら復元するはず。と、想定して私は無謀かもしれない再生方法を試す事にした。これは持ち主の了解を得て試し始めたのだけれど、成功する可能性は半々。ただ数日磨いた時点で、良い方向になって来ているのが確認出来てウキウキ。

ブッテーロ以外の革だとこの方法は絶対試さない。でもこの革なら行けそうな気が強くする。この後、オイルが内側から摩擦によって浮き出しコーティングし始める前に、何度かコーヒー液を染み込ませ磨き続けてみます。ブッテーロには過酷で無謀な事をこれから強いる事になるけれど、期待に応えて欲しいと願いながら毎日欠かさず磨き続けてみます。どうなっていますか、1年後をお楽しみに。

Le Bonheur (21:16) | コメント(4)

Comments

  1. 黒崎 より:

    持ち主の方の辛さは容易に想像できますが、それ以上に「無謀な挑戦」の過程が気になります。写真による変化の比較が楽しみです。
    …皮革だけに

  2. ノブ より:

    革鞄の傷やシミは気にしない。が一番と思っていますが、確かにブッテーロなら味わいとなるのではないかと思ってしまいます。しかし凄い方法ですね。

  3. Le Bonheur より:

    いけそうな気配です。

  4. Le Bonheur より:

    間違いなく六ヶ月はお預かりしているので経過を見に来てください。

Leave a Comment

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。

内容をご確認の上、送信してください。

アーカイブ