ル・ボナーの一日

ペリンガー社のシュランケンカーフ

2016年04月25日

_DSC9643.jpg

シュランケンカーフは今まで26色使いました。フランスの有名メゾンが色指定したこの革の発色は素晴らしい。それに加え革の締まり具合はシュリンク加工した革の中で群を抜いていると思います。この革と出会って15年ほどになります。最初その発色の素晴らしさに釘付けとなり、多くが型押し併用シュリンク革の中、ペリンガー社は世界的にも珍しい本シュリンクでそのシボ感をシュリンク加工のみで生み出しています。ヨーロッパ原皮の中でも特に貴重なアルペン牛の生後6ヶ月前後の革を手間暇かけてなめしたこのシュリンク革はル・ボナー製品にはなくてはならない定番革になっています。

しかしこの革はやっかいな革でもあります。型押しを併用しないシュリンク革は革の本来の素性を隠せないので極端に革の取り都合が悪い。一般的に実寸の1,5倍前後で考えるところを2倍強で必要量を予測しないと厳しい。また今流行りのコンピュター裁断機を使うなんてとんでもなくて、革の伸び方向と不均一な革模様を読める職人の裁断技術を必要とします。それ以上に革製品作りには必須のコバ磨きも美しく収めるには大変手間取ります。それを怠ると高価な革だのに大変みすぼらしく見える革でもあるのです。

そんなシュランケンカーフは現在上画像の半分ほどの色を革屋さんが在庫して頂けているので、その在庫革は1枚からでも購入する事が出来ます。でないと多くの革屋さんでの輸入革の購入方法と同じ1色5000デシ以上でないと買えません。毎年在庫する色が輸入元の革屋さんで増えているとはいえ、どうしても定番色以外の色が欲しいと思っても、1色5000デシはちょっと躊躇してしまう。しかし何とか小ロットでも購入可能なチャンスが年に一度あります。その機会は4月初旬の年に一度のペリンガー社のトップ来日時のミーティング、その時なら色々と頼み事が出来るのです。

_DSC9645.jpg

ドイツで有名タンナーは何と言っても元祖クローム革を作ったと言われているカールフロイデンベルグ社。同時期に創業したのがペリンガー社。今はタンナー業をやめたカールフロインベルグ社の革は入手出来ない。そのメンバーで新たにポーランドでタンナーを始めてはいるが、六ヶ月かけてなめす伝説のボックスカーフは今は作っていない。そのカールフロインベルグ社に変わってドイツを代表する老舗タンナーがペリンガー社。世界の大手クローム鞣しタンナーが廃業もしくは経営権を他業の資本に組み込まれる中、昔ながらの家内工業的に良質なクローム革を作り続けている稀有なタンナー。クローム革は環境の為の浄化装置のピット槽ごとの設置義務化が大きな転機となった。それをクリアーする為に大手は単一大量生産方向に、小さなクローム鞣しタンナーは廃業に。その荒波を乗り越えた決して大手ではないペリンガー社の革は私には特別。シュランケンカーフ、クリスペルカーフ、ノブレッサカーフ、スノーカーフ、ペリンガー社の作るクローム革が私は大好きです。

_DSC9644.jpg

もうペリンガー社のウルリッヒ社長とのミーティングから2週間が経ちました。あの日定番以外のシュランケンカーフの色を4色頼みました。それに加え私たちの希望にそったマットな革の試作を要望しました。小ロットと言っても年々最低オーダー可能量は増えて来ていて、いつの間にやら1色3000デシ以上で✖️4色。これなら普通に5000デシで1色減らしてオーダーしてもあまり変わらない。ちょっと支払いが怖くもありますが、お盆前後に届くのが楽しみ。

Le Bonheur (18:54) | コメント(3)

Comments

  1. イケカツ より:

    シュランケンカーフ、いいですね。数年前に購入させていただいたパパスショルダーのダークグリーンも、色は健在です。ただ、端の部分の色がはげてきてしまいました。回復することはできるでしょうか?

  2. Le Bonheur より:

    端部分が少しだけなら同色のアクリル絵具を調合してすり込むと良いと思います。私はそうしています。

  3. イケカツ より:

     ありがとうございます。さっそく試してみます。

Leave a Comment

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。

内容をご確認の上、送信してください。

アーカイブ