同じブッテーロ革で作ったミニブリーフケースと細ダレスが、それぞれ修理とお手入れで里帰りです。丁度同じ頃作った鞄です。
ミニブリーフケースは取っ手の根革がちぎれてしまっています。原因は明らかです。
防水スプレーその他コーティングしてしまうようなものは塗らないでくださいと、お渡しする時必ず言っているのですが、この鞄の持ち主はラッカーのたぐいを塗ってしまったのです。
そのため革が呼吸出来なくなって硬化してしまい、一番負担のかかる部分が最初に悲鳴をあげた結果です。根革を取り替えたとしても、本体がもうしばらくするとひび割れてきて、無残な状態になるでしょう。そうなったら修復不可能です。
細ダレスは良い状態です。粘り腰のある経年変化をみせています。
実はこの細ダレスは、購入されてすぐに川原で転んで、錠前の下あたりに大きなダメージを受けた経歴をもっています。その時の傷は表皮が削れ小砂利がえぐり入った状態。
いくら復元力のあるブッテーロという革でも、この傷は治らないだろうと思っていました。
それが月日が、思い出の足跡程度のモノに変えてゆきました。ブッテーロという革の復元力恐るべし。
タンニンなめしの革は、経年変化を楽しめる魅力的な革ですが、デリケートです。過剰なお手入れは避けて、水拭きして塩分や汚れを取って、乾拭きするのが無難。
昨日もミネルバリスシオで作ったダレスを持って来られました。革表面のあちこちにシミが出来ています。聞くと、ドイツのヌメ革のカバンブランドで売っていた保革クリームを塗り磨いたんだそうです。そのブランドが使っている革はタンニンなめしの植物性のオイルレザーです。ミネルバリスシオは動物性のオイルレザーなので、そのため科学変化を起こしてしまったのです。保革クリームは植物性オイルレザーには植物性を、動物性オイルレザーには動物性を使わないといけません。ちなみにブッテーロは植物性のオイルレザーです。
バタラッシー社のミネルバリスシオ、ミネルバボックスなどのバケッタ製法の革は、特にオイルを多く含ませている革なので、水拭きして塩分、汚れ以外に古くなった表面のオイルもふき取ってあげると、内側からオイルが出てきて革が活性化して長持ちします。経年変化も均一に変化します。動物性の保革クリームだとしても、バタラッシー社の革には入れない方が無難だと思います。オイル過多になって、革の気孔を塞いでしまうおそれがあります。
そうなると革の寿命を縮めてしまうことになってしまいます。
タンニンなめしの革は過保護は禁物。冬でも水拭き寒風摩擦で厳しく優しく接しましょう。
そうすれば逞しく育ち、長く付き合うことができます。
ル・ボナーの一日
タンニンなめしの革鞄のお手入れ
2007年01月23日
同じブッテーロ革で作ったミニブリーフケースと細ダレスが、それぞれ修理とお手入れで里帰りです。丁度同じ頃作った鞄です。
ミニブリーフケースは取っ手の根革がちぎれてしまっています。原因は明らかです。
防水スプレーその他コーティングしてしまうようなものは塗らないでくださいと、お渡しする時必ず言っているのですが、この鞄の持ち主はラッカーのたぐいを塗ってしまったのです。
そのため革が呼吸出来なくなって硬化してしまい、一番負担のかかる部分が最初に悲鳴をあげた結果です。根革を取り替えたとしても、本体がもうしばらくするとひび割れてきて、無残な状態になるでしょう。そうなったら修復不可能です。
細ダレスは良い状態です。粘り腰のある経年変化をみせています。
実はこの細ダレスは、購入されてすぐに川原で転んで、錠前の下あたりに大きなダメージを受けた経歴をもっています。その時の傷は表皮が削れ小砂利がえぐり入った状態。
いくら復元力のあるブッテーロという革でも、この傷は治らないだろうと思っていました。
それが月日が、思い出の足跡程度のモノに変えてゆきました。ブッテーロという革の復元力恐るべし。
タンニンなめしの革は、経年変化を楽しめる魅力的な革ですが、デリケートです。過剰なお手入れは避けて、水拭きして塩分や汚れを取って、乾拭きするのが無難。
昨日もミネルバリスシオで作ったダレスを持って来られました。革表面のあちこちにシミが出来ています。聞くと、ドイツのヌメ革のカバンブランドで売っていた保革クリームを塗り磨いたんだそうです。そのブランドが使っている革はタンニンなめしの植物性のオイルレザーです。ミネルバリスシオは動物性のオイルレザーなので、そのため科学変化を起こしてしまったのです。保革クリームは植物性オイルレザーには植物性を、動物性オイルレザーには動物性を使わないといけません。ちなみにブッテーロは植物性のオイルレザーです。
バタラッシー社のミネルバリスシオ、ミネルバボックスなどのバケッタ製法の革は、特にオイルを多く含ませている革なので、水拭きして塩分、汚れ以外に古くなった表面のオイルもふき取ってあげると、内側からオイルが出てきて革が活性化して長持ちします。経年変化も均一に変化します。動物性の保革クリームだとしても、バタラッシー社の革には入れない方が無難だと思います。オイル過多になって、革の気孔を塞いでしまうおそれがあります。
そうなると革の寿命を縮めてしまうことになってしまいます。
タンニンなめしの革は過保護は禁物。冬でも水拭き寒風摩擦で厳しく優しく接しましょう。
そうすれば逞しく育ち、長く付き合うことができます。
Le Bonheur (21:29) | コメント(12)
Comments
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お世話になっております。
私が今までに購入した商品の大半はブッテーロですが、普段の手入れは毛足の長い、馬毛もしくは硬質すぎない豚毛のブラシで埃をはらってます。
コロニル“ディアマント”はシダーウッドオイルが主成分で有機溶剤も含まれておりませんが、ロウが含有されてるのが気になりますね。
それと、ホースオイル(馬の脂、特に皮革製品のメンテナンス用に精製されたモノ)は植物性オイルレザー以外では、お勧めできます。
タンニン鞣しの革には有機溶剤が含まれていない(シリコン含有は絶対ダメ!!)メンテナンス商品を購入するのがよろしいかと…。
ちなみに、巷で売ってる“ミンクオイル”ですが、ミンクオイルは数パーセントしか含有されてなく、残りは有機溶剤,ロウなどです。
ミンクファーの手入れ用として、含有率100%のミンクオイルがありますが、1mlあたり5,000円前後と、かなり高価なモノになります。
でも、靴に用いるとかなりの光沢が出て、革にも良いらしいです。 -
はすざわさん
言い忘れていましたが、内張りに使っている革はデュプイのカーフで、カルティエが革製品に使っている革です。ブッテーロという革は爪傷などは目をつぶって、塩分と汚れを取ってあげると良い経年変化をします。気になったらお持ちいただければお手入れします。私の物欲はまだ幼稚園レベルです?。
オカザキさん
ル・ボナーのお客さまには革製品のお手入れ名人が多くおられます。そんなお客様の成功と失敗の経験談は大変勉強になります。 -
こんばんは。
細ダレスはまだまだ使っていきます。5年、10年、15年。。。。
手入れという手入れはほとんどしていないのですが。。
ただ、気が向いたらたまに乾拭きしたり水拭きしたりするだけです。 -
かたさまさん
水拭きと乾拭きが一番安心。後は時々ル・ボナーに里帰りさせれば良い感じで使っていけると思います。15年ともなると途中フレームトップの交換とかの大手術があるかと思いますが、ル・ボナーのお店が有る限り大丈夫です。コバのお手入れもう少しお待ちください。 -
はじめまして、こんにちは。ナガサワ文具センターの吉宗さんが書かれているブログを見て先日お店に伺いました。妻と子供2人連れの4人が21日の昼下がりにお店に入ってきたのを覚えておられますか。お仕事がお忙しそうでしたので、私も万年筆が好きなんですけど・・などとお声を掛けれずじまい、そそくさと帰ってきてしまいました。お美しい鞄の数々、今では身分不相応ですが何時かは手にしたい逸品揃いでした。またお伺いします。
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おのさん
ごめんなさい。覚えておりません。今度来られる時は是非声をかけてください。万年筆のお話いたしましょう。 -
はじめまして。最近、ブッテーロを使ったシステム手帳を購入し、手入れ方法を検索していて、こちらにたどり着いた者です。
皆さん、革の手入れにこだわってみえるようで伺いたいのですが、保革クリーム等での過剰?なメンテはしない方がいいのでしょうか?買ったすぐに、コロ〇ルのプレミアムプロテクトをかけるのがいいとか・・・といった情報があったりで、どれがベストなメンテ、アイテムなのか判断に迷います。どなたかご教示頂ければありがたいのですが。
Re: hiro さん
ブッテーロのお手入れは、基本的に保革クリーム等はあまり使わずブラッシングを小まめにすると良い状態を保てます。爪傷等付きやすい革ですが、そんな時は水拭きしてその後乾いてからブラッシングしてあげると大部分爪傷程度は目立たなくなります。良い革はその革が持っている能力を最大限引き出して使ってあげると素敵なエージングを楽しめます。保革オイル等はブッテーロに含まれているオイルと科学変化を起こしてシミを発生させたりする可能性があるので、出来るだけ優しいデリケートクリームなどが良いですが、それも使わなくてすむ状態ならブラッシングだけでいった方が良いです。過保護は禁物です。
ル・ボナー松本 -
ル・ボナー松本様
ご教示ありがとうございます!
おっしゃるとおりにメンテしていきます。まずはブラッシングなんですね。また神戸に行った時にはお店に寄らせて頂きます。ありがとうございました。 -
いつも楽しく見ています。
初心者で分からないことが多く、二つ教えていただきたいことがあります。
①ベルギーのマシュア社のサドルプルアップも水拭きしても大丈夫でしょうか?
②「乾拭き」というのは、布で「軽く拭く」ことですか、それとも布で「軽い力で磨く」ことですか?いろいろなサイトを見ましたが、「拭く・拭きとる」のか、「磨く」のか、どっちが正しい手入れの仕方なのでしょうか?
Re:ボンジョルノより
サドルプルアップは、オイルと染色が綺麗に入り易くするため、ブライドルレザー同様表皮を擦ってヌバック状にいったん加工してから磨き直した革なので、水拭きは避けた方が良いと思います。
「乾拭き」は「軽い力で磨く」という事です。
お試しください。 -
ご回答ありがとうございます。
乾拭きのみで手入れしてみます。 -
こんばんは、はじめまして。
最近革のペンシースを購入したのですが、お手入れ方法がわからず、探していたらこのサイトさんへ辿り着きました。
タンナリー・マズア社のルガトー(タンニンなめし)なのですが、ラナパーを使用しても大丈夫ですか?
ラナパーは蜜蝋が入っていたので、革が呼吸できなくなるのかと不安になりました。
別のサイトさんは新品はしばらく週一で保護剤をしたほうが表面が落ち着いていいとありました。
どうか教えてください。
お勧めのお手入れ用品も教えていただけたら幸いです。
Re:ボンジョルノより
その革がどういうものか実際に見ないと明確な助言は出来ませんが、ラナパーはしないほうが良いかなと思います。
あまり皮革オイルは使わずに、ひたすら乾拭きかブラッシングをお勧めします。
清潔感を保ちながら耐久性を維持するエージングが楽しめますよ。




日曜日に黒の細ダレスを購入させていただいた者です。取り扱いに関する丁寧なアドヴァイスありがとうございました。鞄ともども良いエイジングを重ねていきたく思います。
あと、とてもここでは書けないウラ話もありがとうございました(笑)。いやー、やはり本職の方はスゴイです。これからも、革製品について相談に伺います。
これは例の鞄ですね・・・。やはりムゴイです。まかり間違ってもこうしないように気をつけねば。
それにしても、松本さんの物欲もなかなかですねー(笑)。ハミさんの目は笑ってなかったような・・・。