ル・ボナーの一日

居心地の良かった万年筆売り場

2007年04月11日

画像 106.jpg 私は万年筆が好きです。万年筆菌に侵されてからまだ日は浅いのですが、不思議な魅力を持った世界です。万年筆で書くという行為自体も、筆で書くほど面倒ではなく、他の筆記具ほどには安易でなく、ほどほどのバランスで書くという行為を楽しくさせてくれます。 それ以上に、この特別な筆記具を作る職人たちの思いが伝わるところがいい。 筆記具メーカーはまず万年筆に全力投球し、その延長線上に他の筆記具を作っているように私は思うのです。そしてその万年筆を売る売り場も文房具屋さんの中では特別な場所であって欲しいと願っています。 私たち夫婦にとって特別な万年筆と接し楽しむ場所がありました。 万年筆菌を私たちにうつしたのは間違いなく古山画伯ですが、それをより豊かな世界に導いたのは、神戸にある老舗の文房具屋さんの5階にあった万年筆売り場との出会いでした。ペンシルビルの5階の万年筆売り場は広くはないけれど、筆記具担当の店員さんは筆記具が大好きで、そのことは伝わりながらもマニアックになり過ぎない柔らかな接客が気持良い、優しい空間でした。万年筆を介して居心地の良い特別な場所でした。その万年筆売り場を私達は知って、神戸に住む私達はその場所で万年筆を購入したいと思いました。 が突然その文房具屋さんは、ペンシルビルからショッピングビルのワンフロアーの平場に移転することになりました。当然移転後も万年筆を売るスペースは特別にあると思っていたのですが、万年筆好きのル・ボナーの顧客の人たちが行ってみると、そういった特別な場所は作られておらず、落ち着いて高級筆記具を愛でる空気はないという。残念です。私は筆記具担当の店員さんとはお会いしたのだけれど、ペンシルビルの5階のような豊かな時間が過ごせなくなった場所で万年筆を買う気にはなれない。 sibori.jpg 商売は利益を出さなければ続けていけません。しかしモノを売る商売はそれぞれのお店のアイデンティティーを大事にして欲しいと思う私です。それに共感して特別なモノはその場所で買いたいと思うのではないでしょうか?。 ル・ボナーオリジナルのペンケース作りもこの文房具屋さんの5階に置きたいというのが動機の一つでした。神戸という地方都市でKOBEをキーワードに独自のモノ文化が豊かになってゆくのを望む私です。 万年筆は文化です。そのことを豊かに育て伝える筆記具専門店が神戸に誕生するといいのだけれど。 モノはそのモノ自体だけでなく、その他多くの要因が豊かさを提供してくれるのではないかと思っています。

Le Bonheur (06:02) | コメント(5)

Comments

  1. gonnosuke より:

    ビルの5階の売り場には一度行ったきりでしたけれど、店員さんの魅力もさることながら雑音のない中でじっくり万年筆を選べるという心地の良い空間でした。
    移転後はどんな風になっているのか気にはなっていましたけれど…
    あのお店独特の佇まいは無くなってしまっているようですね。残念です。

  2. ル・ボナー松本 より:

    gonnosukeさん
    私はまだ新しいお店の方には行っていませんが、行かれたル・ボナーに集う万年筆好きは皆失望したと言っておられました。大変残念です。哲学を持ったお店が神戸から少しずつ減っていくようで、寂しいです。

  3. 三好 より:

    そうなんですよね~
    特別な物は特別の人から特別の場所で買うからこそ、さらに輝き、持つものにとっては宝物になると思います。
    でも特別の人には特別の場所しか似合わないので、またいつか(近い内に?)我々のような輩にとっての特別の場所が現れると思います。
    ペンケース、早く見に行きますね

  4. yossy より:

    はじめまして、Yossyというものです。件の文具屋さんのHPをみてこちらのサイトを知ってから、ずっーと拝見しているものです。12年前に六甲アイランドで勤めていたことがあって、そのとき一度お店に入ったことがあったのですが、当時はまだ学生から就職したばかりで購入できるような身分でもないなと思っていました。実家が長田で両親が靴作りの仕事に従事していたので、自然と革や縫製に関することに興味を持っていて、鞄も大好きだったのでいつかル・ボナーさんでオーダーできればいいなと思っていたところに偶然サイトを拝見してから興味深く読ませてもらっています。
    今回の文具屋さんに対するご意見はある意味複雑な心境で読ませていただきました。僕もこの文具屋さんが大好きで二週間に一回は顔を出すぐらいのマニアなので『うーん(>_

  5. ル・ボナー松本 より:

    三好さん
    小さな地方都市の神戸が、大人のワンダーランドとして魅力的な街であって欲しいと思う私です。
    知れば知るほど面白い街でありつづけるには、老舗のお店の存在以上にに、新しく参加した神戸が大好きで、モノが大好きな人たちのお店が作り出してゆくのかもしれません。
    ペンケースは初期サンプルは完成しましたが、この後相当手直しが必要です。いいものにして行きたいと思っています。
    yossy さん
    はじめまして。
    多量生産の消耗品を購入する場合はそんなにこだわりませんが、自分にとって大事なモノを購入する時は、お店の空気その他の色々な要素も含めて楽しみたいと思っている私です。
    ル・ボナーにおいで下さい。

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