ル・ボナーの一日

私は鞄職人です。

2007年05月15日

5,15工房.jpg 昨夜電話でTAKUYA君と鞄作りについて色々話しました。話しながら自身の鞄作りの現状と夢と妥協を思い浮かべました。 30年間鞄を作り続けて七転八倒し、多くの人たちと知り合ったことで多くのことを学び現在に至り、今が今までで一番幸せな状態ではあると思うのですが、鞄職人として作りたい鞄を作っているかと自分自身に問うと、ハイとは素直に答えることは出来ない。 TAKUYA君はプロとして革製品を作り始めてまだ日が浅いけれど、純粋にハンドメードで革製品を作ることをビジネスとして成立させている。これからの技術の蓄積が、より豊かな革製品作りにつながってゆくだろうと思う。彼の革製品作りの姿勢は、私に多くの刺激を与えてくれます。 それに比べ私は30年間七転八倒しながら鞄作りをしてきて多くの知識は蓄積されたけれど、作りたい鞄を素直に作るという部分には目をつぶっているように思う。 流行を意識し、価格バランスも考えながら、自分達の趣向もそのバランスの中で入れ込んでいくカバン作りをしていてそれはそれで楽しくやっているけれど、カバン職人としての自我はひとまずしまっています。 多くの独立系の工房とは違って、ル・ボナーの多くの製品は量産工房の職人さんたちに手助けしていただきながら、その共同作業から製品を生み出しています。 その合間に、オールハンドメイドの鞄を作っているというのが現状です。 オーダーメイドでお客様の要望に沿った鞄を作る工房とは異なり私たちの望む形態が、オリジナルデザインの鞄作りをしていきたいというもので、そのためには価格も考えないといけないし、スムーズな生産システムも構築しないといけない。夫婦二人ですべての鞄をオールハンドメイドで作るのは無理な状況になっています。 そのため現在の形態でル・ボナーの製品は生み出されています。 しかし、私たちは鞄職人です。純粋に作りたいという欲求を強く持ち続けています。 TAKUYA君と話をしていると、その欲求がますます強くなってゆきます。 鞄職人としてこの時代を生きた痕跡を、特別な鞄たちという形で残さなければいけない時期にさしかかってきたように思います。そんな鞄たちを作る日々を想うとワクワクします。 革棚に蓄積された大好きなデッドストックのヨーロッパ皮革を使って、技術のすべてと夢を紡ぎ入れて。

Le Bonheur (21:09) | コメント(3)

Comments

  1. kazubon より:

    鞄職人として名を馳せるご夫婦が、心から鞄作りを考える姿勢が、この文章からも分かります。ホントに素敵だと思います!
     私は印刷業の1営業職の人間ですが、共感するとこも多いなーといつも思ってます。
    それに松本さんとの企てはホント、面白い!実現する価値は大きいと思います。
    記事にもある通り、規制も多くありますけど、1つずつクリアにしてまいりましょう!
    TAKUYAさんには、まだお会いしたことはございませんけど、ますますお会いしたくなりますねー。

  2. TAKUYA より:

    松本さん
    昨日今日とお電話でとても勇気付けられました。
    いつもノウハウの全てを隠さず教えてくださる松本さんに30年の自信を感じます。
    ブログでもこんなにも元気付けてくださりありがとうございます。
    松本さんを始め、多くの出会いが私を支えてくれています。
    感謝の気持ちを作品に込めて今後も成長してゆきたいです。
    kazubonさん
    是非!!

  3. kazubon より:

    TAKUYAさん
    神戸にいらっしゃった際は是非、お会いいたしましょう!
    ル・ボナーさんとは同じ六甲アイランド内ですので、すぐ集合できますし(w
    弊社にも是非、お招きしたいと思っております。
    その機会を楽しみにしております!

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