ル・ボナーの一日

20年ほど前に作ったトランクが里帰り

2010年03月05日

10%E5%B9%B43%E6%9C%88%20001.jpg 20年ほど前に作ったトランクが修理で里帰りです。 このトランクを作っていた頃は、まだヨーロッパの革は使えなくて、 アメリカ原皮の国産なめしのタンニン革を使っていた。 それが災いして革の表皮は瀕死状態。 でもトランクのようなハードケースは表皮が死んでも、 柔軟性が必要な部品を交換すれば使い続ける事が出来る。 ベルト2本とハンドルをブッテーロ革使って修理します。 最初はコンビ風になるけれど、使い込めば同化する。 10%E5%B9%B43%E6%9C%88%20008.jpg このトランクの持ち主は女性で、 自分の絵をこのトランクに詰め込んで行商で全国を旅し、 風雨にさらされながら共に思い出作った相棒。 トランクに刻まれた傷やシミの一つ一つが愛おしいと言う。 ハンドルとベルトをそのまま使えればその方がいいのだけれど、 旅の途中で切れたりすると困るので交換修理と相成りました。 10%E5%B9%B43%E6%9C%88%20006.jpg 東京の池袋にあった鞄屋さんにあったこのトランクに一目惚れして入手したけれど、 誰が作ったかなんて知らないまま使い続けた。 修理したいと思って、内側に縫い付けてられた「アウム」のラベルを頼りに、 ネットで探してル・ボナーに辿り着いた。 「アウム」は12年前まで使っていた屋号。 10%E5%B9%B43%E6%9C%88%20004.jpg 「オヤジの作る鞄は、ラフだけれど誰も真似出来ない味があるんだよなぁ~」なんて、 職人の私に対してけなされているか褒められているのか分からないけれど、 同業者によく言われる。その象徴的な鞄が、私の作るトランク。 だから今日の夕方、キャリアに括りつけてゴロゴロ持って来たトランク見て、 すぐに私の作ったトランクだと分かった。 昔恋した女性に何十年振りかで再会した時に感じるドキドキ感と似た感覚を、 このトランクと再会して感じるボンジョルノ。 良くなめされた革をお手入れしながら素敵にエージングしてゆくのは素敵だけれど、 傷付きシミが付き朽ち果てながらも、それを思い出のキャンバスのように愛せる付き合い方も素敵じゃありませんか。 鞄作り続けて30数年。 愛情持って使い続けてもらっている私の作った鞄との再会は、 鞄作り続けていて良かったと心底思う瞬間。 思い出のキャンバスは残しながら、心を込めて復元します。

Le Bonheur (21:21) | コメント(7)

Comments

  1. c より:

    ラスポンチャスから来ました。
    はじめまして。
    このトランクは思い出と作品とキモチがたくさん詰まっているんですね。
    里帰りから帰って来るのを私も楽しみにしています。
    Re: c   さん
    本体のやれ具合は残しながら、倍の年月以上頑張ってもらえる復元作業をしたいと思っています。
                           ル・ボナー松本

  2. Dulles club より:

    はじめましてDulles clubと申します
    味のある素晴らしいトランクですね
    やはり丈夫が一番ですね
    復元し終わった姿が楽しみです
    いつも拝見して参考にさせて頂いて
    おります
    どうぞよろしくお願いします
    Dulles
    Re: Dulles club さん
    20年前のラフな仕事ではありますが、その頃の私の精いっぱいの仕事をしていた鞄です。復元した姿はこのブログで公開します。
                              ル・ボナー松本

  3. maimai より:

    私もラスポンチャスから参りました(^^♪
    こんなに大事にされている鞄とそれを作られた松本さんに感動して、今、何もかもが買い替える時代になって寂しく感じている今日この頃でしたが、とっても嬉しく感じました。
    里帰り、楽しみです!
    よろしくお願いします

  4. maimai より:

    maimaiと申します♪
    はじめまして。
    ごあいさつが遅れました。すみません。
    先ほどコメントさせてもらったものです。
    里帰り、私もとっても楽しみにしています。
    Re: maimai さん
    持ち主の思いを残した復元作業をしたいと考えています。シミもキズも残して出来るだけ革を元気な状態に戻す工夫して。
                              ル・ボナー松本

  5. pretty-punchan より:

    作り手と使い手の幸せのひとつの究極の姿だと思い、感動しました。そこにあるのは紛れも無い愛です。少なくとも20年前はまじめに鞄つくっていたということが証明されました。よかったね、ボンジョルノさん。
    Re: pretty-punchan さん
    こんな出会いが、鞄作りの情熱を呼び起こして頂けます。
    頑張ってダレス作りますので、お金作って待っていてください。
                              ル・ボナー松本

  6. 豪&マリちゃん より:

    ラスポンチャスからきました
    私は海外で生活して25年以上になりますが、日本にはまだまだこのような物作りにかける職人の気持ちが残ってるんですねえ、感動しました。
    Re: 豪&マリちゃん さん
    自分が最初から最後まですべて手をかけた品に対して、どこの国でも職人は同じ感情を感じると思います。ただそんな仕事が出来る環境は狭くなる一方だとは感じています。素敵に復元出来たら幸せです。
                           ル・ボナー松本

  7. ぽんぽん より:

    はじめまして、ラス・ポンチャスのブログの記事からお伺いさせていただきました。
    いつも京都で開催される手作り市に出店されるたび目に入って、風情の在るトランクだなぁ、どこで買われたのかいつか聞いてみよう、と思っていたのでした。
    こんな「思い」の込められた買い手の方と、丁寧に作られた「作り手」の方とがめぐり合うなんて、往年のF・キャプラの映画のエピソードのようで、ブログを読んでいる私たちまで胸が熱くなりました。
    これからもこのトランクが幸せな「生き方」を続けられることを、第三者ではありますが、見守らせていただきたいな、と思います。
    いきなり長々と失礼ながらもお邪魔いたしました。
    Re: ぼんぼん  さん
    フランクキャプラの映画は私も大好きです。
    ゆるく幸せな係わり合い大事にしながら、仕事を続けていけたら幸せだなぁ~と思っています。
                              ル・ボナー松本

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