
蝶番も一体で削りだす錠前のメリットは色々あるけれど、その一つにもし蝶番などの突起部分を溶接すると、表面にいくら丈夫なメッキをしたとしても、溶接で熱を加えた部分に酸化する要因を残したまま、メッキで覆いかぶすことになり、メッキの内側で酸化した部分とメッキが剥離し、メッキがパリっと剥がれる可能性が生じます。一体で削り出せば、熱の加わった部分がないので酸化によるメッキの剥離の可能性はなくなり、表面のメッキが削れる心配だけになる。それも今回はカバンの金具ではまずしたことのないニッケルとクロームのWメッキで、素晴らしく頑強なメッキ。1,3ミクロンで均一にメッキしているので、削りだしの文様もちゃんと残っています。
メッキの真鍮への食いつきも、メッキする真鍮の表面を純水で洗浄するこだわりのメッキ職人さんに頼むので心配なしです。
でありながら、精密金属加工会社のK社長の提案?(私だったかなぁ~)でとんでもないメッキの錠前も数個だけ作る事になりました。
まずはメッキ技術の究極を追求したスーパークローム(勝手にそういう名前で呼んでいる)の品。これは宝飾品レベルの光沢を約束します。そして頑強。銅とニッケルとクロームの3層メッキです。メッキ職人の腕の見せ所。
それと、なんとロジウムメッキの品。ロジウムは究極のメッキ素材です。硬度はクロームの100倍(クロームのメッキでも十分固いのに)で、プラチナより全然高価な貴金属です。
それぞれル・ボナーの名前とシリアルナンバーを内側に極細のドリルで彫って各10個のみ作ります。これは凄い事です。簡単には使いません。1/10のシリアルナンバーのスーパークロームとロジウムの錠前は私の棺おけに一緒に入れてもらうために使わないで大事に保管しつづけるかもしれません。
宝飾品レベルのグラスの錠前まで作ってしまうことにあいなりました。これは凄い事です。
前代未聞の企てです。

最終打ち合わせ?を終え、この地の名店ビフテキむさしに。知る人ぞ知る名店なのだそうですが、見た目は至って質素。田舎のお好み屋然。出てきたビフテキ200グラムは素晴らしく旨みに満ちた但馬牛。神戸で食べれば1万円オーバーはするビフテキがなんと3400円。また行って食べたい素晴らしいビフテキ。
ただデミグラスソースがのっているのです。美味しいデミグラスソースではあるのだけれど、あれだけ素晴らしい牛肉、次回は塩で頂こうと思っております。
K社長は私と同年代の、イタリアチョイ悪おやじ風を標榜しつつなりきれない、金属に関しての知識と技術のスペシャリスト。30代でその知識と技術で請われて大手企業の工場長になった金属加工に関してオールマイティーな凄い人なのです。
しかし元来の独立独歩アウトローな性格が災いして、7年前にこの秘密基地の主人となる。約束された安定した生活を捨てたイタリアチョイ悪おやじの奥様はそれを自然に受け止め、今やこの秘密基地は奥様なしでは動かない(私のところに似ている、、、)。
それにしても、K社長夫人は私たちと同年代とは思えない可愛い女性です。どうみても30代に見える。主人に苦労させられる女性は若いままいられるのかなぁ。私たち夫婦同様、、、?。
K社長はモノ作りは面白いとよく言う。モノ作りを面白いと感じている職人同士でしか分からない共通の言語があるように思う。そのことが商売にはならないのに、多くの職人が真剣にこの錠前を作ることに取り組んでいただいた理由があるように思うのです。
Y氏の運転するアルファ147GTAで、ほどほどスポーツしながら六甲山の山道を走り帰路につきました。
Y氏には、モノ作りを楽しむK社長とそのお仲間との出会いをセッティングしていただいて、本当に感謝しています。この後、Y氏、K社長、大和出版印刷、それと私や多くのKOBE MADE(車の神戸ナンバー全域とします)のモノ作りをする人たちがコラボして、新しい企てをしようと思っています。
真剣に遊んで、豊かで楽しいモノ作りの輪を少しづつ広げていければ、なんて素晴らしいことでしょうか。
写真からただものではない重量感が伝わってきますね。ここまできたら,世界NO1の鞄の誕生を待つのみですね。