ル・ボナーの一日

ペリンガー社の社長さんとサライ商事でミーティング

2014年03月26日

3月 24日.JPG

ドイツ・ペリンガー社の社長さんが来日され、輸入元のサライ商事さんにてミーティングがあった。サライ商事さんが定番で扱う革と色意外を小ロットで購入出来る特別な機会です。今回は初めて相棒のハミと一緒に行った。4時30分からの初日の最終枠。しかし今回のミーティングはいつもの感じではなかった。革の具体的な注文は、不安を残す形でほんの少ししただけ。ヨーロッパ皮革全体の状況とそこでのペリンガー社の現状、そしてその革たちをを日本で販売するサライ商事の方向性と個々の取引先との対応について多くの時間が割かれた。

多くのヨーロッパの大きなクロームなめし系のタンナーは大資本傘下となっているかやめている。そんな中、世界最古参のクロームなめしタンナーのペリンガー社は規模拡大に奔走する事なく、良心的にクロームなめし革を作り続けています。シュランケンカーフの原皮はアルプス山麓で飼われているアルペン牛。大資本傘下のタンナーが過剰入手している事が影響して、相場は高騰して高止まりの現状。それ以外の原皮も、中国資本も加わって大変な情況みたい。そんな中、ペリンガー社は高品質なクロームなめし革を作り続けている希少なタンナー。

実は最初にペリンガー社のシュランケンカーフ(ドイツシュリンク)を日本で使ったのはル・ボナーでした。その発色の良さと世界でも希少な本シュリンクの凝縮された質感に魅了されて使いたいと思った。その後ル・ボナー製品のメインレザーはこのシュランケンカーフとなっていきました。別のシュリンク加工された革を見る機会は何度もあるけれど、このシュランケンカーフを越える革には出会えていない。そして今では多くの人たちがこの革を使うようになり、数年前よりサライ商事さんは定番色13色でストックしてもらえるようになった。今後定番色は増殖するであろうと思うし願っている。だって零細の私たちでもシュランケンカーフを多色揃えられるのは、サライ商事が定番でストックしていてくれるから。多くの革問屋さんのようにストックサンプル革をみて発注する方式だと、ベストの発注数は13000デシ(55枚前後)で3〜6ヶ月後納入。

それを1枚から卸値で購入出来る事は助かる。しかしそのサービスを変更するかもしれないという発言がサライ商事の社長さんからあった。本来サライ商事は問屋なので一枚からの販売は、取り扱っている革の良さを多くの人に知ってもらいたいという思いからしている。しかしその対応は問屋業務が優先させているので制限がある。現在サライでの口座取得は年間取引400万円前後を数年続けないと作れない。そんな中での一枚からの販売というサービスが今大きな支障になっているのだと。それも私のこのブログを読んでサライを知って連絡を取って来られる個人が特に問題だと。私も知らない会った事もないブログ「ル・ボナーの一日」を通してサライに連絡をとる若者の対応が厄介な場合が多いと。それは私の責任ではないよね。でもサライ社長はその対応で円形脱毛症になったと言われると責任感じてしまう。ネットや通販が多くなり購入者保護の考えが広がり、それにゆとり世代の甘さが加わって、購入する側が上という風潮が後押ししているのかもしれない。サライの扱う革に魅力を感じて使いたいという思いを持った人には一枚でも販売するけれど、そうでないと感じた場合は売らないというのがサライ商事の姿勢なのです。それを横柄と思う人も多くいると思うけれど、サライ商事の9割の顧客にはダメージはない。このままだとヨーロッパ高級皮革を一枚から購入出来るサライ商事のサービスをやめる事になるだろう。買う側が偉い訳でも、売る側が偉い訳でもない。お互いを尊重した配慮と対応の中でそのサービスは継続される事が良いと思う。だって他問屋ではシュランケンカーフもクリスペルカーフもブッテーロもミネルバリスシオも入手出来ないのだから。それも1枚から個人は買えるのだから。

私が初めてサライ商事と取引きを始めたのは先々代の2代目社長さんの時だった。もう25年以上になる。この2代目社長が特別革好きで、ヨーロッパの高級皮革を仕入れ始めた。当時は、まずサライ商事の取引き先の紹介状なしだと見せてもらう事も出来なかった。私の場合、当時老舗鞄問屋の仕事をしていて、その紹介状を持って指定された日時に訪れた。だからと言っても最初はその鞄問屋経由でないと売ってはもらえなかった。あの時の緊張と興奮は今でも覚えている。その頃はヨーロッパのブランドの多くにもモノ作りに対する拘りと思想が強くあって、それに呼応して魅力的な革を作るタンナーが多くあった。そんな特別な革たちを実際に見て触れた経験は強く印象に残った。でも実際は卸しの鞄を作っていたその当時の私には高価で手が出せなかった。いつかサライの革を使えるようになりたいという思いを持って、それが今かなえられている。その後多くのブランドがグローバル企業の傘下となり、魅力的な革を作るヨーロッパのタンナーも急激に減った。そんな中私にとってクロームなめし革は、ペリンガー社が最後の牙城なのです。イタリアにもフランスにも昔魅力的なクロームなめしの革があった。でも今は私は知らない。

Le Bonheur (12:33) | コメント(3)

Comments

  1. doc_mak より:

    大変ですね!
    よい革を多くの人が使えることはすばらしいことだけど供給を維持することは需要との関係だけではなく複雑なんですね。ミコノスが良いって気軽にいってた自分が恥ずかしいです。ル・ボナーのファンとしては松本さん、サライ商事さんに心から頑張ってとエールを送ることしかできないのかな?やっぱりたくさん買わなくちゃいけませんね。

  2. 卓袱堂 より:

    とても難しい問題ですね。それでも、どんな時代でもインターフェイスの最後の砦は人間性に尽きると思うし、そう信じたいです。陶芸の世界でも、良質の粘土はお金を出しても買えません。歴史のある窯元では、常に次の代の粘土はすべて先代が用意していると聞きます。備前なども外部の人間では良質なものを入手するのは不可能に近い。それでも、その中で勝負していくしかないですもんね。

  3. Le Bonheur より:

    ミコノスの入荷は五分五分です。

Leave a Comment

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。

内容をご確認の上、送信してください。

アーカイブ