ル・ボナーの一日

「鞄仙人」小林哲夫氏に会ってしまったぁ〜。

2010年11月15日


今回の「アファンの森で語る会」に参加して、前々から気になっていたけれど会う機会がなかった鞄職人の方と会う事が出来た。道もまともに通っていない山奥で、木こり兼業で個性的な手縫い鞄を20年以上作り続けているカバン職人・小林哲夫氏だ。氏の作る鞄は自己流の極めだ。でも全ての制約から解き放たれて作られたその鞄は、氏のアイデンティティーを強く感じ取る事が出来る。


その鞄たちの一つがこれ。厚みのあるヌメ革しか使わない。手縫いしかしない。注文主の要望は最小限しか聞かない。ラフな鞄です。でも孤高の魅力感じる鞄だ。聞くとヌメ革は最初汚れやすいので、組み上げる前に何度も馬油と特殊な動物性オイルを塗り込みその問題を解消していると言う。そしてボンド使った仮止めをせずに手縫いで組み上げるという。その事がどれだけ意味があるのかは別にして、それらのこだわりと仙人のような生活から、唯一無二な個性的な鞄たちがゆっくり生まれて来る。この特別なヌメ革の鞄を愛用する古山万年筆画伯や万年筆くらぶ会長・中谷でべそ氏たちが言うには、小林氏を「鞄仙人」と命名したのは私らしい。でも本人もそのあだ名を気にいっておられるようなのでまあいいか。



その小林哲夫氏がこのお人。40歳までは大手有名店の革製品のバイヤー。その後何を思ったのか、人里離れた山奥に工房を構え孤高の鞄仙人に。本人金はないけれど今が最高に充実していると言う。会う前私は仙人のような身なり(作務衣?)を想像していた。全然違って爽やかアウトドアなオールドマンではありませんか。しかし日々の仕事と生活を聞くと面白過ぎます。食べ物は基本自給自足。そのナチュラルな日々は十分ノンフィクションの物語の主人公。だから自由に生きられる。自由に鞄を作れる。現代社会の閉塞感から解き放たれた氏の生き方に憧れ感じる私です。でも俗な私には出来はしない心豊かな生き方。


その小林氏はつい最近新車を買った。4WDの軽トラだ。普通の車だと底打ちして途中で車を放棄して歩いていかないとたどり着けない山奥に住む氏にとって車は4WDが絶対だ。そして今後買い替えないで済むとしたら、この選択しかない。そんな道具としての軽トラが素敵だと思った。アメリカの田舎人がボンネットトラックを誇らしげに乗っているように、日本の田舎暮らしには4WDの軽トラが良い。話しを聞くと特別なエコポイントで格安購入出来たらしい。田舎暮らしするなら、公共の恩恵を最大限利用する事が大事だ。私の愛車・アルファ・ロメオとは対極に位置するチョイス。


その軽トラの助手席に乗って色々お話しした。貧乏自慢から社会の有り様?まで。あっ忘れてた。当然鞄の事も。独立系鞄職人ではあるけれど業界の中枢とも関わり持ちながら鞄作りする私とは対極に位置する鞄仙人。でも不思議なぐらい気が合う。それが心地良い。

小林哲夫氏の作る鞄に興味を持たれた人がおられたとしても、簡単にはアクセス出来ません。もし何とか連絡とれて実際に作った鞄が欲しいと思ったとしても今は売ってくれません。来年の5月に開催する東京・恵比寿での展示会に向け月1.5本ペースで作り続けている途中。その為今売ってしまうと展示会に並べる個数が減るからと。来年5月の展示会が私も楽しみです。是非とも私も表敬訪問したいと思っています。

間違いなく無二の鞄たちです。そして無二の鞄職人です。
でもナチュラルな人が作る、ナチュラルな鞄です。

Le Bonheur (23:37) | コメント(1)

Comments

  1. M.M. より:

    恵比寿での鞄の個展といえば、この間、藤井さんがつくられた16点の鞄の展示会を拝見しました。これまたもともとエンジニアであられるFugeeさんの鞄!達。購入は難しくとも仙人の鞄もぜひ拝見したいですね
    Re:ボンジョルノより
    鞄仙人は20点展示販売する為現在製作中です。
    手縫いし過ぎて腱鞘炎状態だそうです。
    その力作を見に行ってください。

Leave a Comment

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。

内容をご確認の上、送信してください。

アーカイブ